賃貸と寄託で異なる倉庫の費用・契約期間の考え方
新たに倉庫を探すとき、どのような契約で借りるかは大変重要なポイントです。倉庫の契約方法は賃貸契約と寄託契約の2種類に分かれます。
まず賃貸契約では、倉庫のスペースをあらかじめ決めて月額料金で契約します。スペースのみを借りる契約となるため、入出庫作業はもちろん、梱包や検品、ラベル貼付等の作業をしたい場合には、借主側が自分たちで行うか、作業員を手配する必要があります。
契約期間は3年以上(更新あり)であることが多く、申込後に審査が行われるため、契約まではやや時間がかかります。マンションやアパートなどの住居の賃貸と同様ですね。また、契約期間中でも前もって申告すれば途中解約ができますが、3ヶ月などかなり前に申告しなければならないことがほとんどです。この期日は賃貸契約書で決められています。
また、全ての倉庫で設備が整っているわけではないので、保管する貨物によっては、空調などの大掛かりな内装工事が必要になってきます。賃料のみならず、設備や利便性など多様な面から考えて倉庫を選ぶことが大切です。
賃貸契約は決まったスペースを自由に使うことができ、保管料が固定なので支出管理がしやすいというメリットがあります。一方で、貨物量が少ない時期にも毎月同じ月額賃借料がかかってしまいます。また、他の倉庫に変えたいときにも、すぐには解約できません。さらに現状回復する必要がありますので、借りる際に大掛かりな工事をした場合には、退居時にも時間とコストがかかることが想定されるでしょう。
一方で寄託(きたく)契約は、預けた貨物の量・期間に対して料金が発生する契約形態です。倉庫を「借りる」のではなく倉庫に「預ける」と考えるとイメージしやすいかと思います。日本では倉庫業法という法律があり、倉庫業とは預かった貨物を安全に保管する業務であり、取り扱う貨物は原料、製品、冷凍・冷蔵品、危険品など広範囲に渡ります。
寄託契約は、この倉庫業法に基づき登録を受けた「営業倉庫」のみで契約が可能です。営業倉庫となるためには倉庫設備の基準や管理者主任の配置、火災保険加入等の厳しい基準をクリアする必要があるため、安心して貨物を預けることができます。貨物を預ける側を寄託者と呼び、商社、生産者、加工業者、メーカー、運送会社、小売業者、通販事業者などさまざまな企業が該当します。
寄託契約では、入出庫等も含め全て倉庫が手配をします。作業員を手配する必要がなく、倉庫に一貫して作業を任せられる点は大きなメリットです。ただ、希望する作業(ラベル貼り等)は倉庫によって作業対応が難しかったり、料金が割高になることもあるため、注意が必要です。
賃貸契約ではスペースに対する月額賃借料だけが発生するのに対し、寄託契約での利用料は基本料(システム利用料)、保管料、入出庫料、検品料、梱包料、その他付随作業料(ラベル貼り、輸出入の許可前検査対応等)などから成り立っています。その中でも、保管料の算出方法については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
以下で詳しく見ていきましょう。
保管料の算出方法
(写真:iStock)
保管料の算出方法は、「坪貸し」と「個建て」で異なります。
坪貸しでは、固定のスペースに坪単価をかけたものが保管料となります。基本的には1ヶ月単位でのスペース貸しとなるため、賃貸契約と混同してしまいそうですが、貨物の管理や作業は倉庫に任せることができます。契約期間も賃貸よりは短く、一般的には3ヶ月~1年(更新あり)となります。
保管料は固定となりますが、繁忙シーズンでも保管スペースを確保できるという点で安心です。物流業界は商材によって取扱量の波があるので、坪貸しの契約にしておけば預けたい貨物があるのに倉庫がどこもいっぱいで入らない、という事態を避けることができます。
それに対して個建てでは、保管する貨物1個単位で単価を設定し、「保管積数 × 保管料単価」で保管料が算出されます。貨物の大きさが均しい場合によく用いられる契約形態です。
保管積数の単位として主要なものを以下に挙げます。
・使用坪数:大きさがバラバラな貨物や梱包されていない貨物をまとめて保管する際によく使われます。坪貸しではあらかじめスペースを決めますが、こちらは使用したスペースの分だけ請求されます。
・容積:輸出入用の貨物に対してよく使われます。単位M3はエムスリーと読みます。
・パレット:パレット単位で入出庫する貨物によく使われます。
・重量:容積と比較して重量が大きい貨物の場合によく使われます。液体物や穀物が多いですが、冷凍の原料貨物(魚介)等も重いため、重量で計算されることが多いです。
このように、貨物に応じたさまざまな単位をもとに単価が設定されるのです。
3期制とは?
これらの保管積数をもとにした契約では、月単位の請求ではなく「3期制」をとるのが一般的です。3期制とは、1~10日を第1期、11~20日を第2期、21日~月末を第3期とし、それぞれの期で保管料を算出して合算する方法です。請求自体は月単位となります。
保管料の計算式は保管積数×保管料単価と前述しましたが、3期制における保管積数は「前期末の在庫+今期の入庫数」となります。つまり、前月末時点、10日時点、20日時点での残りの在庫をベースとして、それぞれの期に入庫した数量を足して各期の保管積数が算出されます。
(写真:iStock)
保管料を考えるにあたって注意すべき点は、期の中では何日に入庫しても同じ保管料がかかることです。また、期末の在庫数と、その期の計算基準となる保管積数も異なります。期末までに全量出庫し終わり在庫がゼロになっていたとしても、前期末の在庫+今期の入庫数はその期の保管料として請求されます。朝入庫し、その日の夕方出庫するような場合でも、保管をしてもらっている事実には変わりないので、入庫数分の保管料はかかってきます。
分かりやすく例をあげてみましょう。保管料単価は50円とします。
前月末在庫が100の場合
(第1期)
・5/2 50入庫(在庫150)
・5/7 20出庫(在庫130)
第1期の保管積数:100+50=150 保管料:7,500円
(第2期)
・5/18 70入庫(在庫200)
第2期の保管積数:130+70=200 保管料:10,000円
(第3期)
・5/25朝 100入庫(在庫300)
・5/25夜 100出庫(在庫200)
・5/30 50入庫(在庫250)
第3期の保管積数:200+100+50=350 保管料:17,500円
<5月の保管料合計:7,500円+10,000円+17,500円=35,000円>
第3期のような場合は少々混乱してしまいそうですが、前期末の在庫+今期の入庫数という原則を忘れなければ計算も容易です。
3期制は主に常温倉庫で採用されており、冷蔵倉庫では1~15日を上期、16日~月末を下期とする二期制が用いられることもあります。
寄託者はできるだけ保管料の負担を減らすべく、期の始めに入庫し、期の終わりまでに出庫するように調整しようとします(物流業界では期が変わるタイミングを「期替り」と呼びます)。そうすれば1期分の保管料のみで済むからです。そのため期替りの前後は入出庫が集中し、トラックの手配が難しかったり、荷受け・荷降ろしまでの待ち時間が長くなる事態が発生します。この状況を解消するために、倉庫協会では2期制・3期制の概念を覆すような多様な料金体系を導入すべく、動き始めています。
事業を始めたばかりで在庫が少ない場合や、物量が年間を通して大きく変動する可能性が高い場合には、3期制という契約方法をとることで保管料を抑えられるでしょう。
一方で3期制のデメリットは、大量の入出庫が頻繁に発生する場合には、実際に使用したスペースに比べて保管料が割高になってしまうという点です。ひと月の中での貨物の入出庫の動きを分析し、状況によっては料金体系を見直すことが、保管料の削減に繋がるでしょう。
輸出入の場合はどうなるの?
(写真:iStock)
せっかくなので輸出入貨物の保管料についても見てみましょう。
海外からコンテナ船で到着した貨物は、税関の輸入許可が下りるまでは「保税貨物」という状態となります。保税貨物を保管できるのは原則として保税倉庫のみとなりますが、保税倉庫は全て営業倉庫の役割を持っています。保税業務は税関の厳しい監視下にあるため、倉庫での作業には保税に関する知識や専門性が求められます。そのため、一般的には賃貸契約ではなく寄託契約を結び、作業は全て倉庫に任せることになっています。
また、保管貨物の動きから見ても、坪貸しではなく個建てなど保管積数をベースにした2期制・3期制の契約が選ばれます。輸入では、一回の船積みでコンテナ1本またはそれ以上の大量の荷物が入庫されます。輸入者はなるべく保管料をかけないために、貨物の輸入許可がおりるとすぐに自社倉庫に引き取りますので、在庫が一気に出庫されることが多いです。坪建てで契約してしまうと、スペースに対して貨物がない期間が発生します。さらに、荒天等で予定していた船が一週間程遅れることもあります。そうなると、せっかくスペースを借りているのに預ける貨物がない状態が続くことになってしまい、保管料を無駄にする結果となってしまうのです。
また、輸出貨物は保管料を最小限に抑えるために、基本的にバンニング(コンテナ詰め作業)の日程に合わせて直前に入庫し、すぐに出庫となることがほとんどです。倉庫で英語ラベルを貼って積み込む場合もあります。メーカーの規約で梱包して出荷するまで手を加えられないので倉庫で貼るしか選択肢がなかったり、倉庫で作業をする方がコストが抑えられる場合があるためです。その場合、手作業でラベルを貼りつけるのには相当な時間がかかりますので、早めに商品を搬入しなければならず、2期分や3期分の保管料がかかることもあります。自社に必要な作業を考えて、余裕を持って輸出入の計画を立てるようにしましょう。
soucoは全国2,500超拠点(※2024年2月時点)の登録倉庫から、お客様のご要望に合う倉庫をご提供しており、特に寄託契約の場合には日毎に保管料を計算する従量課金制を採用しています。
新規事業の立ち上げや物量が大きく変動する場合には、保管料を抑えてお得に活用いただけます。倉庫をお探しの際にはぜひお気軽にご相談ください。