倉庫の出荷業務
倉庫の出荷業務とは、倉庫に保管している荷物や商品を注文先に搬出するための一連の業務を指します。主な業務として、「荷役(ピッキング・積み込み)」「検品」「流通加工・包装」「梱包・封入」などがあります。
はじめに、倉庫の出荷業務の一連の流れについて説明します。
出荷指示書の作成
顧客から注文が入ると、受注担当者は出荷関連の書類を作成し、倉庫担当者に対して出荷指示を行います。出荷指示を行う際には、出荷する商品の品名や数量を記載した「出荷指示書(ピッキングリスト)」を発行し倉庫担当者に渡します。
ピッキング
ピッキングは、倉庫に保管している商品の中から、出荷指示書(ピッキングリスト)に書かれている商品を集める作業です。ピッキングする商品や数量を間違うと誤出荷の原因になるため、正確性とスピードが要求されます。
ピッキング作業ではピッキングロボットやピッキングリフト(ピッカー)が使われることもあります。
仕分け
ピッキングした商品は、出荷先別や積み込むトラック別などに細かく仕分けが行われます。仕分け作業は人力による手仕分けが中心ですが、自動仕分けのロボットを導入している倉庫もあります。
検品
ピッキングと仕分けが終われば、次に商品の検品を行います。検品は出荷業務の中では最も重要な業務であり、精度の高い検品を行うことで、欠品や誤出荷の防止につながります。
出荷検品では、主に下記の作業を行います。
・数量検品
・不良検品
・混入検品
・作動検品
数量検品は、出荷指示書に記載している数量と出荷する商品の数量をチェックする作業です。不良検品・混入検品・作動検品は、出荷する商品に不具合がないかをチェックする作業で、補修のできる商品があれば倉庫内で補修を行います。
梱包・封入
梱包は、包装した商品をダンボール箱などの梱包材に詰め込んで、荷造りをする作業を指します。梱包を疎かにすると、輸送中に商品が破損してしまう恐れがあるため、物流における梱包は重要な業務です。
梱包をする際は、エアパッキンや新聞紙、発泡スチロールなどの緩衝材を用いて、輸送中の衝撃で商品が破損しないようにします。
封入は、チラシやパンフレット、納品書などを同封する作業です。チラシやDMなどを封入することで、リピート客の獲得などにつながります。
梱包・封入が完了した商品はパレットに積載し、荷崩れ防止の保護フィルムを巻くパレット梱包を行います。すべての梱包作業が終了すれば、パレットに積載した商品をフォークリフトで出荷場(バース)に運びます。
積み込み・発送
パレットに積載した商品をフォークリフトでトラックに積み込めば、出荷作業は終了です。なお、商品によってはバラ積み(手積み)になることがあり、人海戦術で商品を一つずつトラックに積み込みます。
(写真:iStock)
出荷業務の問題点と改善策
出荷業務では、人的ミス(ヒューマンエラー)が原因の誤出荷が大きな問題になります。誤出荷をすると、クレーム対応や代替品の発送などで生産性が大きく低下し、顧客からの信頼を損なうことにもつながります。
出荷業務で多い人的ミスとして、出荷指示書の記載ミスやピッキングミス、宛先間違いなどが挙げられます。
人間が作業をする以上、人的ミスをゼロにすることはできません。しかし、人的ミスを限りなくゼロに近づけるための対策が必要です。
WMS(倉庫管理システム)とは?
誤出荷を限りなくゼロに近づけるには、出荷業務の機械化・デジタル化の推進が鍵になります。これまで手作業で行っていた出荷業務の工程を機械化・デジタル化することにより、誤出荷の防止や作業効率の向上につながります。
なお、機械化・デジタル化は出荷業務だけでなく、物流のあらゆる工程で推進することが必要です。
機械化・デジタル化を推進し、物流のこれまでのあり方を変革することを「物流DX」といい、WMS(倉庫管理システム)を導入すると、物流DXの実現に大きく貢献します。
WMSとは、「Warehouse(倉庫) Management(管理) System(システム)」の略語で、倉庫業務(保管、入荷、出荷、加工)の最適化が図れる物流システムを指します。
WMSを導入すると、出荷管理だけでなく、入荷管理や在庫管理、棚卸し管理、返品管理、帳票・ラベル発行など、倉庫業務のすべてを一括管理することが可能です。
ERP(統合基幹業務システム)でも大まかな倉庫管理はできますが、WMSは倉庫管理に特化しており、倉庫の状況をリアルタイムで一括管理できることが特徴です。
なお、WMSでも在庫管理はできますが、管理ができるのは倉庫内の在庫に限られます。倉庫外の在庫も含め、適正在庫の維持を実現するのであれば、在庫管理システムの導入が必要です。
WMSを開発している企業は、海外ではマンハッタン社やInfor社などが有名で、日本では各3PL(サードパーティー・ロジスティクス)が独自開発していることが多いです。
出荷業務とWMS
WMSを導入すると、出荷業務の各工程の最適化が図れ、出荷業務を一元管理できます。
<出荷業務の工程>
出荷指示書の作成→ピッキング→仕分け→検品→流通加工→梱包・封入→積み込み・発送
・出荷指示書の作成
受注管理システムで受注したデータをWMSに取り込むと、正確な出荷指示書(ピッキングリスト)が出力されます。出荷指示書を手作業で作成すると記載ミスをする恐れがありますが、WMSを導入すると出荷指示書の記載ミスの防止に役立ちます。
・検品
WMSを導入するとバーコード検品をすることが可能です。検品担当者はハンディターミナルで商品のバーコードを読み取り、出荷指示のデータと照合します。現物と出荷指示を照合することで正確な数量検品ができます。
WMSを導入すると目視で検品するよりも正確性が高まり、誤出荷の防止と検品作業のスピードアップが図れます。
・流通加工
ラベルなど、流通加工に必要なものがWMSから印刷されます。
・梱包
送り状(伝票)や出荷ラベルなど、出荷に必要なものがWMSから印刷されます。
上記はWMS活用の一例です。WMSを導入することで、作業の効率化(スピードアップ)、正確性の向上(人的ミスの軽減)、コスト削減、倉庫のデッドスペースの削減、サービス向上などにつながります。
(写真:iStock)
WMS(倉庫管理システム)を導入するためのポイント
WMSのシステム形態には複数の種類があり、それぞれコストや特性が異なります。WMSを導入する際は、どの業務を改善させたいのかをはっきりさせておくことが大切です。
そのためには、出荷業務の各工程の現状(作業時間など)を把握したうえで、ボトルネックになりそうな部分を洗い出しておきます。
WMSを導入することで洗い出した課題部分を改善し、出荷業務全体の最適化が図れ、生産性向上につながります。
WMS(倉庫管理システム)の種類
WMSは大きく分けて以下の3種類のものがあります。
・パッケージ型
・クラウド型
・オンプレミス型
パッケージ型はパソコンにインストールして使用し、手軽に利用できることが特徴です。価格も手頃で簡単に導入・運用できますが、カスタマイズ性に乏しく、現場の状況に合わせて最適化することはできません。
クラウド型は、クラウドにアクセスして使用し、初期費用をかけずにすぐに導入・運用が可能です。ただし、ランニングコストがかかり、カスタマイズ性もやや乏しく、仕様変更は限界があります。
オンプレミス型は、倉庫の状況に合わせて自由にカスタマイズでき、倉庫業務の最適化が図れます。ただし、導入・運用にコストと時間がかかります。
WMS(倉庫管理システム)を導入・構築する際の注意点
WMSを導入・構築する際は、WMSは誰が持つのかによってプロセスの主導権が異なってきます。
物流業務をすべて自社で行う1PL(ファーストパーティー・ロジスティクス)の場合は荷主企業がWMSを持ちます。この場合は当然ながらプロセスの主導権は荷主企業にあります。
しかし、物流業務の一部を外部委託する2PL(セカンドパーティー・ロジスティクス)や物流業務のすべてを外部委託する3PL(サードパーティー・ロジスティクス)の場合、WMSは荷主企業が持つのか、委託企業が持つのかによってプロセスの主導権が異なってきます。
荷主企業がWMSを持つのであれば、プロセスの主導権は荷主企業にあります。この場合、荷主企業は比較的簡単にWMSをカスタマイズすることが可能です。
一方委託企業がWMSを持つのであれば、プロセスの主導権は委託企業にあるため、作業プロセスに関するノウハウを蓄積することはできません。
このように、物流業務を外部委託している荷主企業がWMSを導入・運用する際は、WMSを誰が持つかによってプロセスの主導権が異なるため、事前に検討しておくことが大切です。
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