港湾倉庫と保税倉庫
日本では、貿易の9割以上を海上輸送が占めています。なかでも貨物の取扱量が多い東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港は日本5大港と呼ばれています。2021年の統計では、日本の貿易額1,678,521億円のうち、2位東京港187,198億円、3位名古屋港177,693億円、4位横浜港122,078億円、6位大阪港97,936億円、7位神戸港94,797億円となりました。1位と5位はそれぞれ成田国際空港と関西国際空港です。
(参考:神戸税関 全国順位表データ 令和3年度全国港別貿易額表)
港湾倉庫は港の近くの倉庫で、立地としては内陸倉庫と対比されます。国内貨物の運搬ではなく主に輸出入貨物を取り扱うため、利便性を考慮してコンテナヤードの近くに作られることが多いです。
港湾倉庫のうち保税貨物を扱うことのできる倉庫を、一般の倉庫と区別して「保税倉庫」と呼びます。保税倉庫は港湾地域にしか造れないわけではなく、要件を満たせば内陸地にも造ることができますが、管轄の税関からの距離が設置許可に関わってくるので港湾地域にあることが一般的です。
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外国貨物は保税地域以外の場所に置いてはならない
貨物の輸出入に関わる税関手続きについては関税法で定められていますが、「外国貨物は保税地域以外の場所に置いてはならない」という大原則があります。船や航空機によって外国から到着した貨物は、必要な検査を受けるとともに税関に関税を納めることで輸入許可が得られますが、許可前に貨物の関税支払いが留保されているという意味で「保税」と呼びます。輸出許可を受けた貨物も、日本の貨物ではなくなっているので保税状態です。
税関の知らないところで輸入許可前の貨物の形態が変わっていたり、勝手に販売されたりしては貿易の秩序が守れません。そのため輸出入の申告は原則として貨物を保税地域に入れてから行うことと定められており、保税地域では厳格な管理体制がとられています。
保税地域は、財務大臣の指定する指定保税地域(コンテナヤード等)、税関長の許可を受けて設置される保税蔵置場、保税工場、保税展示場、総合保税地域の5つに分かれています。
保税倉庫はこのうち保税蔵置場に区分され、関税がかからないという利点を生かして通関までの保管に主に利用されます。ここでは保税貨物を最長2年間(さらに延長可能)置いておくことが可能です。
通関を切る日は大忙し!
輸出入許可を得る手続きのことを、税関を通すという意味で「通関」と呼び、通関を切る、通関が切れた、などといいます。保税倉庫において貨物の通関を切るまでは作業がいくつもあり、多くの人が関わっています。それぞれの工程でシステム登録が必要になりますが、日本では輸出入・港湾関連情報処理システムNACCS(ナックス)(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System)というシステムが使われています。
NACCSは税関、厚生労働省、船会社・航空会社、コンテナヤード、通関業者、倉庫等を繋いでおり、通関に関わる業務を一元的に管理できるようになっています。コンテナ番号やB/L番号(Bill of Ladingの略。船荷証券のこと)ごとに、それぞれの担当者が処理した内容をアルファベットのコードによって入力するので、コンテナヤードから引き取られた、または通関が切れた等、貨物の動きをほぼリアルタイムで知ることができるのです。
ここでは保税倉庫で通関が切れるまでの輸入貨物の動きを見ていきましょう。
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輸入貨物の通関
船からコンテナヤードに荷卸しされたコンテナは、検疫対象貨物の場合には検疫を終えた後、運送会社によってヤードから搬出されます。このときコンテナはまだ外国貨物のままなので、税関の承認を受けて「保税運送」が行われます。
保税倉庫に到着すると、倉庫の作業員はまずコンテナ番号とコンテナシール番号をArrival Notice等の書類と付け合わせ、相違ないか確認します。また、ヤードでの搬出時にもチェックはされているはずですが、コンテナに著しいダメージがあったりリーファーコンテナ(冷凍・冷蔵機能付きのコンテナ)の温度設定が正しいか確認し、必要であれば検数業者の立ち合いの元、デバンニング(荷卸し作業)を行います。
パレットで積まれてきているかバラ荷物か、また仕分け作業等の有無によって作業時間が変わってきます。仕分け作業とは、主に同じコンテナ内の貨物を分けて通関する場合に輸入者から倉庫へ依頼されるもので、食品衛生法等の検査対象貨物以外の貨物を先に通関して出荷したい、というような場合に有用です。
すべての貨物のデバンニングが終わると、貨物の種類と個数、外装のダメージの有無等を確認し、NACCSにて搬入登録をします。
冷凍・冷蔵の食品は食品衛生法の検査対象になることが多いので、搬入が上がると通関業者が厚生労働省から「見本持ち出し」の許可を取り、検査協会員が倉庫に実物を引き取りに行きます。検査が無事に完了すると輸入申告に進み、税関検査に該当した場合には検査を受けた後で輸入許可となります。
その後は国内貨物として在庫を管理し、デリバリーオーダーに沿って出庫していきます。
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効率的な貨物管理のために
保税倉庫では貨物の厳格な管理が義務付けられていますが、関税法の規定に反して適切な記録や取り扱いがされなかった場合は「保税非違」となり、一定期間の倉庫への搬入・搬出停止や許可の取り消し等の重い処分が科せられます。輸入貨物を未許可のまま出庫してしまう、輸出許可前の貨物を積み込んだコンテナを倉庫から出してしまうなど、あってはならないことなのです。
このように、保税倉庫は通常の倉庫とは事情が異なるため、うまく活用することで貨物の安全性の確保、コスト削減やスムーズな通関につなげることができます。輸入貨物を国内に供給するための保管場所として特に適しているのが保税倉庫です。一方で、一般的に倉庫使用料も高くなることから、通関後の貨物の長期滞留や国内貨物の一時保管には適していません。メリットを考慮した倉庫選びが大切です。
いかがでしたか?
soucoでは、国内貨物を短期間から保管できる倉庫もご紹介しています。保税倉庫での通関手続き後、国内貨物として割安で荷物を保管したい‥そんなときにもぜひお気軽にお問い合わせください。ご相談は無料で承ります。
(参考にしたサイト)
・独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「自社倉庫を保税蔵置場とする手続き」
(参照2022/05/16)